古道具・和家具小物の修理
裁縫箱の修理のご依頼をいただきました。
ありがとうございました。
こちらの裁縫箱は、お施主様のお母様の形見の品という事で、とても思い入れのあるものというお話でした。
修理してまだ使えるようだったら、是非そうしたいという事で、この度当便利屋へお話をいただきました。
裁縫箱の状態は、側板の剥がれ、引き出しの建て付け不良、巾木のはずれ、それに上蓋がなくなっておりました。
<修理>
裁縫箱の状況を見極め、一箇所ずつ修理していきます。
先ずは側板の剥がれ。
剥がれかかっている部分を一度拡げ、接地面を掃除して、木工ボンドを塗り込みます。
もともと打ってある釘を打ち込み、ハタガネという道具を使って挟み込んで固定します。
はみ出たボンドは綺麗に拭き取ります。
ハタガネもクランプもそうですが、家具部材を押さえて接着するときは、直接部材を挟み込まず、必ずあて木をします。
あて木をするのは、直接挟み込むと、部材にハタガネやクランプの跡が残ったり、部材が変形してしまう事があるので、それを防ぐためです。
特に古いものは、木質が弱くなっている場合があるので、締めこむときも様子を見ながら慎重に行います。
こちらは巾木の外れ。
巾木を留めていた釘が錆びて、凹凸を形成しているので、巾木を取り付け直す前に、抜いたり削ったりして、フラットな接地面を作ります。
巾木に木工ボンドを付けて、細ビスで留めていきます。
細い部材へのビス打ちは、材が割れてしまう事があるので、錐で下穴を開けてから、極端を避けて打ち込みます。
次に引き出しの建て付け修理です。
底板が外れてめくれ上がっているため、引き出しの下部が干渉してしまっておりました。
こちらも木工ボンドを付けて、クランプで圧着していきます。
無くなった上蓋は、新たに作らせていただきました。
材は栂です。
オイルステンで塗装し、真鍮の飾り丁番を取り付けます。
表面の擦れや汚れをサンディングして、再塗装する事も可能なのですが、お施主様の小さい頃になさった落書きなどもあり、思い出が詰まっているという事でしたので、この度は全体のクリアーオイルの塗装に留まらせていただきました。
お施主様の、思い出を大切にされるそのお気持ちに触れさせていただき、この度は本当に有意義な作業をさせてただきました。
便利屋として色々なご依頼をいただきますが、修理という作業は、本当に奥が深いと感じます。
技術的にもそうですが、お品に対する思いも十人十色ですので、その方がどんな思いをもって修理を望んでらっしゃるのかという事も、とても大切です。
私は気の利く方ではないのかもしれませんが、お客様の大切な思いに、しっかりと添えるよう、これからも精進してまいりたいと思います。
この度は便利屋助作のご利用ありがとうございました。