竹穂松明垣の修理
奈良市九条町にて竹垣の修理のご依頼をいただきました。
ありがとうございました。
現場の方を拝見させていただきますと、凝った作りのお庭の竹穂松明垣です。
棟竹も板屋根も朽ち、竹穂の松明を支える胴縁竹も落ちていて、辛うじて形を保っているという状態でした。
<修理>
先ずは竹穂をひとつづつ外していき、構造をむき出しにします。
朽ちた胴縁竹や屋根を取り外し、杭柱を立て直して杭で補強します。
この度は両の柱はそのまま使わせていただきました。
柱のホゾ穴に新しい胴縁竹を入れて固定します。
胴縁竹の径が合わないところは、ホゾ穴を拡げてしっかりと端を入れ込みます。
棟木を取り付けて、板屋根を張っていきます。
板屋根の板は事前に合欠き加工を施したものを使用します。
棟竹は現場で加工します。
棟木の長さに合わせて竹を節の先で切り落とし、円の3分の1強に割り欠いていきます。
竹は、その繊維に沿って割れていくので、うまく鉈で割れを先導しながら割いていきます。
棟竹をステンレスの長ビスで固定し、ビス留めの箇所を棕櫚縄で飾り締めします。
板屋根が出来たら、最初に取り外した竹穂を取り付け直して行きます。
初めに胴の針金で竹穂を胴縁竹に固定してから、棕櫚縄で括っていきます。
竹垣や植木の枝を括るときなどに使う結び方は、「男結び」と言われる結び方で、普段はあまり使わない特殊な結び方です。
蝶結びや団子結びなどの一般的な結び方ですと、結び締める時、どうしても最後に少し緩んでしまします。
しかし男結びの場合は、最後に縄を引き締めた状態のまま、緩めることなく括ることが出来るので、特に竹垣を作るときによく使われます。
棕櫚縄を結ぶ箇所と縄の端を揃えると、よし美しく綺麗に仕上がります。
竹垣は大変手間のかかる作り物です。
凝った竹垣は手間のかかる分、ある種息を飲む美しさがあると思います。
竹垣を構成する素材は、近代的な建物の丈夫で長持ちする建材とは違い、木も竹も自然の物ですので、時間とともに色あせ、やがては朽ちていきます。
永遠ではないそのはかなさの中にある「美」を感じさせる竹垣は、まさに日本的な感覚の造形物の代表といってもいいように思います。
終わりがあるからこその美しさ。
この竹垣の一生の内の一コマに携わらせていただいたこと、嬉しく思います。
この度は便利屋助作のご利用ありがとうございました。