奈良市二条にて網戸製作のご依頼をいただきました。
ありがとうございました。
現在取り付けてある網戸が古くなり、構造的にもガタがきているようなので取り換えて欲しいという事で、同じ仕様の木製網戸を製作取り付けさせていただきました。
部材加工です。
和製建具はホゾ組が基本です。
ホゾを作るにあたってまず初めにすることは、罫引きでの印付けです。
これから穴を掘る箇所や鋸でカットする箇所に印を付けるのですが、これが実は一番重要な作業です。
実際の加工はすべてこの最初に付けた印をもとにしていくので、印がくるっているとこれからの作業もすべてくるってくる事になってしまします。
ですので、落ち着いて計算して、しっかり確実に印を付けていきます。
先ほどの罫引きの印をもとに、ホゾをカットしていきます。
ホゾの先は必ず面取りして、組み立ての時に先が入りやすくしておきます。
組み立て前に面取りをして、すべての部材の表面を仕上げておきます。
組み立て作業、今回はビスも使います。
片吊りの開き戸ですので、垂れ防止に斜めにサンを入れます。
組み立て後は素早く対角線の歪みと上下のねじれを直します。
時間が経ってボンドが乾いてしまうと、もう癖がついてしまって動きません。
捩じれの直し方は、建具上框と下框を同時に睨み、ねじれの有無方向を確認して、足に引っ掛けて体全体を使い、ねじれている方向と逆の方向に捩じります。^^
・・と言葉で書くとこんな感じですが、実際にやってみるとなかなか繊細な作業です。
ちょっと動かしただけでガバッと動いてしまう事もありますし、力をかけてもなかなか動かない場合もあります。
そうこうしているうちに、だんだんとホゾが離れて縦と横框の接地部分がすいてきたりすると、もう一回叩きこまなければならなくなります。^^;
初めのうちは何回も触って何回も直してくちゃくちゃにしてしまいますが、慣れてくるとあんまり触らなくてもよくなります。
昔見た寿司屋のテレビドラマで、弟子が親方に「そんなにべたべた触るもんじゃない、」と怒られるシーンがありましたが、一緒だなと思います。
職人と呼ばれる業界には、「見切る」という事が必要になってくる場面がちょこちょこあると思います。
もう触らなくても良い、もうOKというラインを自分で決めるという事、それにはやはり経験と自信がどうしても必要になってきます。
修業時代を考えると、70を過ぎた職人さんの「見切り」には、潔さと美しさがあったなと、憧れの思いとともに思い起こされます。
今、職人になりきれずに便利屋としての看板を掲げておりますが、ふとしたときに出てくるのは、年を経た職人の携える、あの独特の静けさと潔さへの憧れかもしれません。
さて、もうまとめに入ってしまったような感じですが、作業続きです。^^;
網を木サンで留めてから、網のカットです。
網は張り過ぎるとカットしてから外れてくる事もあるので、適度にテンションを掛けます。
丁番で網戸を吊り、戸当たりを三方に取り付け、真鍮の取手を取り付けます。
戸当たりはあまりぎりぎりに取り付けすぎると、建具が動いたときに(木が伸縮して反ったり縮んだりしたとき)突っ張ったりしてうまく閉まらなくなる場合があるので、すこし遊びを持たして留めます。
マグネットキャッチを取り付けて、最後に動作確認です。
集中して物を作る時間をいただけるという事は、本当に有り難いなと思います。
思い起こせば、楽しいというか気持ちいいというか、いい経験なのですが、きっと集中している瞬間はそんな感情もなく、一種の瞑想状態というか、ただ作っている、ただ動いているという感じなのかもしれません。
またひとつ良い経験をさせていただきました。
この度はありがとうございました。
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