和アンティークの建具修理
昭和の茶ダンスの引き戸修理のご依頼をいただきました。
ありがとうございました。
小さな板戸とガラス戸の修理です。
まずはガラス戸の方から。
こちらは全体的にホゾがゆるんで枠が広がり、ガラスが溝に収まらず落ちてくるという状況です。
薄い板と釘で補修した跡がありますね。
補修の板を外し、枠を外していきます。
古い製品の補修は本当に気を使います。
木材自体の劣化もありますので、様子を見つつ少しずつ、一つ一つの作業を慎重に行います。
枠を一度外しもう一度組み直すために、仕口接地面をきれいにします。
埃は拭き取り、補修の跡のボンドをきれいに削っていきます。
接地面積が広ければ広いほど、組み直した時の強度が出ますので、この作業は大変重要です。
入念に木工用ボンドを付けて、組み直します。
組んだ時にボンドがはみ出ると、ふき取るのに時間がかかりますし、ボンドが残ってしまうと塗装が乗らないので、新品を作る時は、なるべくはみ出ないようにギリギリのところを狙うのですが、補修の時は気にせず沢山付けます。
木工用の白いボンドは、アロンアルファやセメダインからすると、なんとなく効きが甘いイメージがありますが、実は、木に関しては木工用の白ボンドが最強です。^^
水に弱いという難点はありますが、接地面がきれいに整っている場合の接着力は見事なもので、単純な構造の接着でも、力がかかったときに割れるのは、接着した場所以外の木部だったりします。
こちらは板戸の裏側です。
いたるところに補修の釘があります。
アンティークの補修をするとき、釘やビスやピンネイルなどで補強することはよくあるのですが、それは応急処置で、根本的な解決にはなりません。
応急処置は時間もかかりませんし、お値段もきっと安くできると思います。
しかし、腰を入れて元から直そうとしたとき、それが障害となってきます。
正直、へたに補修したアンティークの修理ほど大変なものはありません。
釘をすべて抜いていくのですが、釘が錆びて劣化しているので、きれいに抜けずに残ってしまうものも出てきます。
その場合は、状況にも依りますが、下手にこじって木材を痛めるよりも、工具で切ってしまう方がきれいに補修できます。
こちらも木工用ボンドを入れて組み直して、ボンドが乾くまで固定します。
この度のお品は、お施主様のおばあ様が大切にされていたものだとお聞きいたしました。
「大事に思う気持ち」
小さな引き戸ですが、このお品を通じて世代を超えて何か思いが受け継がれていくという事は、とても素敵に思います。
このような作業に携わらせていただき、本当に嬉しく思います。
この度はありがとうございました。
⇒ 〇建具の修理について
〇関連のある記事